食器は食材が盛り付けられることによって、花器は花材がいけ込まれることではじめて
「うつわ」としての存在が全うされるものです。ですから華道と花器はその成り立ちの頃から密接な関係を持っていたと言えます。
2021年より開始したARITA×SOGETSUは有田焼窯元(㈱ ARITA PLUS)が芸術分野(いけばな草月流)と協働で花器を開発、その協働作業の過程において、有田焼の強みである卓越した技術力と多彩な表現力、それに加えて有田の地で長きにわたり培われた美意識や芸術性を最大限に引き出し、また双方が新しい表現を探求し、触発し合うことで、新たな芸術の共創に向けて挑戦する試みです。また最終的には製品化にまでつなげ、新規市場を開拓することを目標としています。
産業振興、地域振興においては当事者が自ら考え、発想し、行動することが何より重要です。さらにその取組を長期にわたって行い、より多くの人を巻き込むことが最終的に持続性のある産業・地域の活性化と自立につながると考えています。本研究では、研究者は創造的なプロセスの組み立てと場作りをファシリテートすることに努め、窯業者と華道家の自由な発想を促す役割を担っています。
またナマの芸術活動に触れることの少ない環境下にあって、いけばな関連のイベント参加者の創作意欲を触発し、また若い世代にこの取組を知ってもらい、日本の文化や伝統に興味や関心を集めることで、次の世代の産地の後継者が生まれることを期待しています。
伝統はそれぞれの時代の先駆者の挑戦の積み重ねによって継承されてきました。この取組みが、互いが踏み出す新しい一歩になることを願っています。
佐賀大学 肥前セラミック研究センター
本田智子